海外に売れる番組フォーマット/娯楽番組、現地版が続々
日本のバラエティー番組のアイデアが海外から引っ張りだこだ。番組そのものではなく、番組の構成やコンセプトを買って次々に現地版が制作されているのだ。米国版「料理の鉄人」やロシア版「ロンドンハーツ」が登場し、中には八十カ国に売れた人気番組もある。多チャンネル化による世界的なソフト不足を追い風に、日本のテレビ局も新たな収入源として売り込みに力を入れている。
▽内容で勝負
「そちらの新番組と同じ内容の番組を作りたいのですが…」。放送局の番組改編が迫った九月。TBSの担当者は海外のテレビ関係者からひっきりなしに掛かる電話の対応に追われた。「このところ、春と秋の改編前はいつもこうですよ」と同社コンテンツ事業部の杉山真喜人(すぎやま・まきと)部次長が話す。
彼らのお目当ては、タイトルや構成など番組の内容や作り方をまとめた番組フォーマット。料理ならレシピに当たる。番組の二次利用はこれまで放送分をそのまま売る「番組販売」が主力で、「ポケットモンスター」などのアニメは世界中で放送されている。だがバラエティーとなると、人種や言語が壁となり、海を越えるのは難しかった。
その点、フォーマットなら内容で勝負できる。実際、「トリビアの泉」や「マネーの虎」などのフォーマットを欧米のテレビ局が次々に購入。アジア各国でも「伊東家の食卓」などの現地版が続々と放送されている。
▽リサイクル商売
「フォーマット販売のうま味は、放送一回分の番組を制作するごとに支払われる使用料にある」と杉山部次長は言う。
TBSが一九八六年から六年間放送した「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」は約八十カ国に売れ、米ABCで放送十七年を迎えて現在も使用料が支払われている。これは、いわば使い捨てだったアイデアを再利用するリサイクルビジネスとも言える。
急成長するインターネット広告に押され、テレビ局を支える広告収入はほぼ横ばいで「今後も大幅な伸びは期待できない」(キー局幹部)。頼りは映画製作などの放送外収入で、例えばTBSは昨年四百六十六億円だった放送外収入を二〇一〇年には約三倍の千五百億円にする計画だ。各局が力を入れるフォーマット販売からは、こうした業界の苦境もうかがえる。
▽異常発達
衛星放送やケーブルテレビの普及による多チャンネル化で番組ソフトは各国で不足気味。加えて日本のソフトの質の高さも注目を集める一因だ。
「アニメやゲームだけでなく、日本はテレビ番組のアイデアも素晴らしい」。十月上旬、フランスのカンヌで開かれたテレビ番組などの国際見本市で、フジテレビ欧米戦略部の田中暁子(たなか・あきこ)副部長はドイツの制作者にそう絶賛された。日本の娯楽番組は発想が斬新だけでなく、出演者のせりふを字幕で見せたり、効果音で笑いを入れたりと演出もきめ細かいという。
一方で関西大の山口誠(やまぐち・まこと)助教授(メディア研究)は日本のバラエティーの質の高さを認めながら、その背景について「不況による制作費の削減が低予算・短期間で制作できるバラエティー番組を異常発達させた」と説明。「それを下支えしたのは、使い勝手のいいタレントと、低賃金の下請け制作会社だ」と指摘する。
多メディア化によって各国のテレビ業界は生き残りに必死だ。日本に求められているのは、上質のソフトだけでなく、手軽な番組作りのノウハウでもあるようだ。
東奥日報より引用
http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/danmen/danmen2006/1028.html